プラダを着た悪魔

最初の1時間17分は主人公にイライラしたけど、1時間20分以降は徐々に主人公の本質がわかって印象が良くなっていき、最後にはいい話だ〜〜〜(泣)ってなった。

まず何にイライラしたかというと、主人公のアンディが仕事を舐めくさってて無知で甘ったれてるように見えることね。マジで1時間くらいは「この子ほんとに頭いいキャラなの??」って思わせる描写しか出てこない。

これは多分アンディが真面目であることを表現してたのかなと思う。悪くいうと「勉強しかしてこなかった子」で、実力や勤勉さを外部にアピールすることには疎い。ただ真面目に頑張っていれば認めてもらえると思ってるから、他人から気づいてもらえない子。

後半になると徐々に努力の成果が表に出るようになる。ファッション誌の業界に揉まれたおかげで、「自分の内面(実力や性格などあらゆる部分)を目に見える形で表現する」というスキルが身についてきて、外見や振る舞いの中にアンディの真面目な部分や努力家な部分が見られるようになってくる。

アンディは甘ったれているのではない。慣れない仕事で奔走する裏でファッション業界の知識や上司のやること、同僚の努力などを見て必死に学び、毎日毎日小さな成長をしている。本人は自分の努力を知っているから、「私なりに頑張ってる」「ちゃんと日々成長してる」と思ってる。しかし序盤は外見が伴わない故に理解してもらえない。溜まっていくフラストレーションばかりが表に出るから、周囲からは「頑張ってないのに愚痴ばっかり言ってる」ように見えてしまう。

友人たちはどうかわかんないけど、彼は途中からそのぎこちなさに気づいていた感じだね。アンディのことを理解してるしアンディの愚痴聞きもしてるから、ハイブランドはアンディには似合わないと思うしアンディに合わない仕事だとも思う。しかしアンディは業界に順応できるように必死で努力してるから、彼の見方が「否定的」に思えてしまう。

アンディの本質は真面目な努力家であること以上に人に優しく寄り添うこと。たとえハイブランドの価値が理解できなくても、ハイブランドに人生を捧げる人の気持ちは尊重できるというところ。周りの人が懸命な努力によって仕事をこなしている姿をちゃんと見ているから、いざという時に庇うことも寄り添うこともできる。

(だからこそ自分も「懸命な努力を評価してもらえるはずだ」と思ってしまう、ファッションに興味のない誠実な子が陥りがちな思い込み。世の中では過程よりも目に見える結果=外見や振る舞いのほうが評価されるだろう。)

アンディの人間性を見抜いたミランダは、アンディはこの業界にいるべきではないだろうと気づいた。ミランダはこの業界に君臨し続けるためにライバル、友人、部下、家族そして自分をも犠牲にしてきた。そんな自分とは真逆に、失意のミランダに寄り添おうとしたアンディを見て「あなたが大切にしている全てを犠牲にして私についてきなさい」とは思わなかった。自分の秘書にするには優しすぎる。

アンディ自身も「他人に寄り添う心」を捨てて仕事を重視するような人間になることを望まなかった。そしてありのままのアンディに戻った。アンディの実力が発揮できる場所へ移り、アンディの感性で素敵だと思える服を着て、自分を深く理解してくれていた彼の元に戻る。慣れないファッション誌の仕事を通して最終的には自分らしい生き方を見つけることができた。

彼氏が一番最初にアンディの長所を理解していて、一時は迷走して独りよがりになったアンディを最終的に受け入れてくれたところがすごく良かった。彼はアンディと同じくらい、人の本質を理解してくれる優しい人間なんだって思った。彼に対してちゃんと自分の間違いも素直な気持ちも話したアンディも素晴らしい。

ストーリー上メインで語られるのはファッション誌業界の厳しさなのに、プライベートな会話の方が主人公の「内面の美」をより表現していた。

とはいえ、主人公が賢いとは思えないんだよな。努力していて勉強ができる子だとは思うけど、未経験の業界に入って早々に編集長の愚痴を溢すなんて、身の程知らずにも程がある。その時点で賢い振る舞いじゃないんだよ。

先述した通り、勉強ばかりやってきて「他人からはどう見えているか」という点を重視してこなかった真面目な学生で、大学を卒業して間もないならこれだけ社会性が弱いのも理解できる。つまりは社会人経験がないことの表現なのかな。

学校で学んだこと以外も経験と洞察で対応できなければ、そして謙虚さがなければ賢い人間とは言えないと思う。この考え方は日本的なのかな。

まとめ的な追記

ミランダのような「プラダを着た悪魔」になるためには、氷のように冷たくならないといけないんだけど、アンディは凍った心を溶かす側の人間だ。アンディを「ダサくてみっともない子」と思ってたみんなも最後にはそれに気づいた。

自分の信念を曲げることなく、努力によって周囲に認められ、幸せをつかんだ。煌びやかな世界とは無縁の真面目ちゃんにとって120点のハッピーエンド。

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